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詩(ポエム)

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作: 如月 玲慈

 間宮良太は夢を見る。

 暗く、淀んだ泥の中。

 暗澹たる思いを抱いて、縮こまる。

 学び舎にて、辛い事、悲しい事がある度に縮こまる。

 泥の深くに縮こまる。

 辛い事、悲しい事に耐える内、泥からゆっくりと芽が一本。

 ゆっくりと芽が出る。

 上下もわからぬ泥沼の中、小さく細い芽が一つ。

 沼の水は冷たく、暗く。

 光も射さない。

 級友から、蔑まれ、家人から怒られる度、その芽は少し、ほんの少し、育つ。

 悲しみを糧にして、辛さを糧にして、その芽は育つ。

 ゆっくりと育つ。

 良太の目からもわからぬ程にゆっくりと、その芽は育つ。

 つらい事、苦しい事を飲み込む内に、ゆっくりと育つ。

 やがて芽は育つ。

 少しだけ明るい方へと、青空へと。

 ゆっくり、育つ。

 自分でも育てる気も無いのに、それは苦しみを糧にして、悲しみを糧にしてゆっくりと育つ。喜びを目指して。

 だんだんと辺りが明るくなり、水が澄んできても、がんばってもがんばっても、芽の育つ速さは変わらない。

 それでも、苦しみを糧にして、悲しみを糧にして、その芽はゆっくりと育つ。

 明るい水面が見えても、後もう少しで手が届きそうでも、がんばっても、芽の育つ速さは変わらない。
 
 やがて、芽は水面に出る。

 力を入れるのは、がんばるのはここからだ。
 
 良太は力を込める。

 限りの力を込める。

 ポン! と音を立てて、大輪の華が咲く。

 泥の中に落ちた種が悲しみと苦しみを糧にして華を咲かせる。

 悲しみと苦しみを糧に、最後は自分の力で華を咲かせる。

 青い空も、雄大な雲も、眩しい太陽も、もう自分の物だ。

 あるいは、ここから出発する者もいるのかも知れない。

 だが、良太は泥から這い出して、ここに着いた。

 一旦、身体を休めて、また芽を伸ばすかも知れない。

 それでも、今は太陽の下。

 良太は満足げに華を咲かせる。

 間宮良太は眼を覚ます。

 母に起こされ、ままならぬ現実へ。

 学び舎へと、向かう。

 ガヤガヤと騒ぐ朝の教室。

 「……おはよう」

 良太は小さく、挨拶を口にした。

 騒ぐ教室では良太の言葉を耳にする者はいない。

 それでも、良太の心臓は早鐘の様に鼓動を打つ。

 小さく、泥の中で、種が動いた。

※この詩(ポエム)"蓮"の著作権は如月 玲慈さんに属します。

作者 如月 玲慈 さんのコメント

がんば。

この詩(ポエム)の評価
評価項目評価数
深い 1
素敵 1
感動 1
好感触 1
合計 4
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この詩(ポエム)へのコメント (8件)

ウィティ

'10年3月16日 00:38

この詩(ポエム)を評価しました:好感触

描写が深く鮮明で、目に見えるような、そんな印象を受けました。
まるで絵画のようです。
如月さんはライトノベルで主に活躍されている方ですが、素敵な詩もお書きになるのですね。

ラストは臨場感があって、これからどうなるのかなという気にさせられました。
お上手だなあと思いました。

如月 玲慈

'10年3月16日 00:51

ウィティさん>
コメントありがとうございます。
拙作ですが、誰かを勇気付けられたらと思って畑違いの分野ではありますが、思い切って投稿しました。
ご一読、ありがとうございました。
                        如月

__

'10年3月16日 01:38

この詩(ポエム)を評価しました:深い

心に咲く花を大事に育てよう・・・

はじめまして。
どこかの歌詞にあった一節です。

良太君は、ほんのちょっぴり、だけど
成長したんですね。
ほんのちょっぴり、って、本当は100%
なんですよね。
本人にとっては、これほど大きな壁なんかないー
けれど、それを乗り越えていかないと、成長しない。
成長できない。

優雅に泳ぐ白鳥のように、水面下で必死に足をかいている。
白鳥の表情は、いつも冷静で、何もなかっただけど、
きっと良太君は、本当は冷静ではない。

足掻いて足掻いて、必死に太陽にむかって延びて行く姿まで
思い浮かびます。

わたしは昔、不登校生でした。
いじめを受けて、萎縮して、学校にいつも背を向けていました。
泥沼だったけれど、本当に自分が努力して
その中から這い出そうと、努力しただろうか?と・・・

それでも、人は知らずうちに成長していくんですね。
精神年齢は良太くんと同じかもしれないけれど・・・

成長していく、姿って、案外、目にみえていないところで、
生きているんだな、と。

泥の中に咲く、蓮の花は、とても綺麗です。

如月 玲慈

'10年3月16日 06:52

>るーてしあさん
コメントありがとうございます。
正直、私よりも作品理解がある事にびっくりしました(笑)
心に咲く花を大事に育てよう、とても素晴らしい言葉をありがとうございました。
                       如月

miwanoko

'10年3月16日 06:56

この詩(ポエム)を評価しました:素敵

如月さん

さすがですね。
心に花を咲かせましょう、何て聞いた事はありますが
これはまさにそれを体現していて凄いです。深いなぁ。

如月 玲慈

'10年3月16日 07:01

>miwanokoさん
あ・・・ちょっと意外な再会が(笑)
コメントありがとうございます。
どうしてもノベル寄りになってしまいましたが、そう言っていただけると本当にうれしいです。
ありがとうございました。
                      如月

珈琲

'10年7月9日 15:57

この詩(ポエム)を評価しました:感動

こんにちわ、如月さん。
素晴らしい詩ですね。粘り強く、そして悲しみと苦しみを味わった華は本当にとても
綺麗でしょうね。なかなか芽が伸びなくてそれでも少しずつ伸びてゆく、生命力の凄さに脱帽です。
良太は、夢の中で、何かを掴んだんですね。きっと今迄とはちょっと違ってきた人生に出逢える筈ですね。素晴らしいお話(詩)の展開だと思いました。素敵な作品
ありがとうございます!!

如月 玲慈

'10年7月9日 20:46

こんにちは。
コメントありがとうございます。
きっと誰しもが、心に花を持っているものと思います。
そういった気持ちを感じてもらえたのならとても嬉しいです。
ありがとうございました。
                    如月

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